■マコの傷跡■

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chapter 61




~ chapter 61 “男友達” ~

彼女がうちに住んでから半年ほど経った頃、彼女は仕事も軌道に乗り
「そろそろ1人暮らしを始める」と言う。
まだまだ心配ではあるけれど、彼女がそうしてみたいと思ってるのに止める事は出来ない。
私は「うちの鍵はまだ持っていていいから、またダメだと思ったらいつでも戻っておいで。
“試してみる”くらいな気持ちでやればいいよ。何かあったら、すぐ電話するんだよ」と言った。

前の彼女とは違う。少しづつだけど、しっかり自分を見つめようとしてる。
きっと大丈夫だろう。既婚の彼の都合のいいようになってしまうのは気になるけれど
それも自分で見極めて決めていく事だ。
自分を大事にする事を覚えると、今まで周りに居た人が
本当に自分を大事に想ってそばに居てくれたのかそうでないのかわかってくるのだろう。
彼女の口から、例の既婚者の彼の愚痴も増え、彼に対して不信感を持ち始めている様でもあった。

私と彼女が知り合った会社に居る男友達が
うちに遊びに来て彼女の様子を知り、ずっと心配してくれていた。
当然、彼女と彼も、昔から顔見知りではある。
その男友達は私がまだ色んな事に気付く前、私に
「真琴は100人居たら、100人全員に好かれようとしてるだろう」と言った人だ。
「100人居たら100通りの考えがあるんだから、その全てに好かれるなんて無理なんだよ。」
「だって嫌われるのは嫌だもん」と言う私に「それはそれでしょうがねぇんじゃん?
そうやって自然淘汰されて、残ったやつが本当の友達ってもんだよ」と言った。
“それでも、たった1人であっても、嫌われるのは嫌なんだもん・・・”
言われた時はそう思っていたけれど今ならその通りだと思える。
100人全部に嫌われない様にする事は不可能で、たとえそれが出来たとしても、
その100人のうちに、私を好きになってくれる人はきっと1人も居ないだろう。
うわっつらだけの付き合いの人が100人いるよりも、
心から信頼出来るし、してくれる人が1人いる方がどれだけ心強いだろう。
100人とうわっつらの付き合いをするなんて疲れるだけだと今は思う。

私は、その男友達は話を引き出すのが上手いと思っている。
上手く自分の気持ちが整理出来なかった頃、彼と話す事で自分の根っこが見えた事も多かった。
その彼が、どうやら彼女を好きらしいと気付いたのは彼女がうちを出て行くちょっと前だったと思う。
その男友達は独身で、彼女も居ない。

“まだまだ、誰かに依存していたい彼女が既婚の彼を完全に切ってしまうのは
危険だけれど、他の誰かに移行する形なら・・・?”

私は彼女と彼が付き合えばいいのに、と思った。彼女の気持ち次第なのだけど・・・。
彼女は最初「彼の事は恋愛対象に見れないと思う」と言っていた。
「まぁ、付き合うとかじゃなくていいから、2人で遊んだりしてみたら?私も結構彼と話してて
勉強になった事たくさんあったし、きっとあんたにもいい影響出ると思うな。
彼氏は既婚者なんだし、別に男友達と遊んでたって問題ないでしょ?」

1人暮らしになったら、きっとまた寂しくなる時が来る。
そういう時に彼氏は連絡も取れず、会いに来てもくれない。
2人だけで遊ぶほど仲良くなれば彼女は寂しくなった時、きっとその男友達に連絡をするだろう。
男友達はフットワークの軽い人で、遊びに誘って出てこなかった事が今まで1度もない。
きっと彼女のアパートまで車を走らせるに違いない。
それでどうにもならなければそれまでだけど、
少なくとも彼が、彼女の寂しくてどうしようもない時に助けてくれるのは私としても助かるし、
私にとって彼はとてもプラスになってくれたから、彼女にもきっと同じ様な効果を与えてくれると思っていた。
ちょっと仕組んだっぽくなっちゃうかもしれないけど、無理矢理くっつけた訳じゃないし。
あとは成り行きを見守ろう。

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